福岡県みやま市とセロリ

みやま市は、福岡県の南部に位置し、熊本県と接しています。

御牧山、清水山などの山々と、有明海の干拓によって開かれた広大な低地が広がった田園地帯には、一級河川の矢部川が通り、その支流の飯江川、大根川などの河川が地域内を流れています。

これらの河川がもたらす肥沃な土壌と豊富な水に恵まれたみやま市は、自然豊かな農業のまちとして発展してきました。

みやま市でセロリの生産が始まったのは1962年頃。

太平洋戦争終戦後に米軍が、日本国内に基地を設けたことと深い関係があります。

欧米では、セロリは薬用や、肉の臭み消し、煮込み料理やスープのベースなどに使われてきました。基地に住まう軍人やその家族の食事はもちろん洋食で、たくさんのセロリが消費されます。そのセロリ栽培の新たな候補地として、土壌が適していたみやま市が選ばれたのです。

実は日本では、1590年代の朝鮮出兵の際、加藤清正がセロリを持ち帰ったものの、独特な香りが敬遠されて普及しなかったという逸話が。欧米の食文化が主流になった現代だからこそ栽培が根づきました。

みやま市は、長野県、静岡県に次ぐ日本三大産地です。

セロリは、涼しい気候を好み、暑さや極端な寒さを嫌います。

温暖なみやま市でセロリの生産ができるのは、土壌の豊かさと生産者による温度管理徹底の賜物。

古くは江戸時代、みやま市を通る一級河川矢部川は幾度も氾濫を起こしていました。この矢部川が、上流からの大量の土砂を運び、セロリが好む砂質土で水はけが良い土壌となりました。

また、6-10月頃に出荷の最盛期をむかえる長野県などの寒冷地と時期をずらし、みやま市では冬場にビニールハウスの温度管理を徹底することで、11-6月という長い期間での出荷を実現しています。